コーヒー豆の焙煎を科学する〜成分変化と反応〜

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「焙煎はシンプルなもの」

私はそう思っているのですが、それでもコーヒー豆は焙煎の仕方によって様々な表情を見せます。

それがまた焙煎を難しく感じさせる原因でもあるのでしょう。

そこで今回は、

「焙煎をすることによってどんな変化が起きているのか」

について、科学的なアプローチで焙煎の謎に迫ってみようと思います。

その前に、焙煎について未だイメージがつかないという方は、

こちら2つの記事をお読み下さい。

特に焙煎を鍛錬して行く上で大事なポイントは、

焙煎とは、生豆の熱エネルギーによる変化であり、どう熱エネルギーを扱うかということです。

その中で今回のテーマは

  • 「生豆→焙煎豆」における化学的成分変化
  • 美味しさに関係する化学変化

この2点に絞っていこうと思います。

また、今回の内容に関しては、

これまで多大な実験をされた先人の情報や私が実際に焙煎してきた経験をもとに、

「焙煎によってコーヒーをコントロールするにはどうしたら良いのか」

というゴールに対してなるべく簡潔にできたらと思っています。

少し細かく書くので、苦手な人はなんとなくイメージとして掴んでおくと焙煎をする時に手助けとなると思います。

コーヒー生豆と焙煎豆の成分変化と味わい

コーヒーを飲んだことある人に「コーヒーの味ってどんなイメージですか?」と尋ねると、

「苦い」「酸っぱい」というような答えが返ってきます。

極端な話、コーヒーの味は「酸味と苦味」がそれぞれ多いか少ないかが明確な違いです。

一般的には浅煎りであれば酸味が多いですし、深煎りであれば苦味が多い傾向があります。

実際に「コーヒーの違いなんて、苦いか酸っぱいかぐらいしか分からないわ」という方も多いです。

ここまではいいでしょう。

では、なぜここまで色んなコーヒーがあると思われるのでしょうか、、、、

また、なぜあそこのコーヒーはまた飲みたくなると思われるのでしょうか、、、

少し科学してみようと思います。

生豆→焙煎豆の成分変化

コーヒー豆には様々な成分が含まれますが、その中でも特に変化が大きいものをみていきます。

成分 生豆(%) 焙煎豆(%)
タンパク質 12.1 3.2
ショ糖 7.6 0.3
クロロゲン酸 7.9 3.0
その他 14.6 33

参考文献:もっと知りたいコーヒー学―工学屋が探求する焙煎・抽出・粉砕・鑑定etc.

(その他の成分は、植物が本来持っている成分であったり、カフェインが少々ありますが、ほとんど変化がありません。)

さて、これを見ると、「タンパク質、ショ糖、クロロゲン酸」が熱エネルギーによってなんらかの成分に変わっていることがわかります。

さて、主にこれら3つの成分と熱エネルギーによって起こる化学変化は次の3つです

  • メイラード反応
  • カラメル化反応
  • 分解

それぞれ見ていきましょう

メイラード反応

「糖+アミノ酸」が熱エネルギーによって、メラノイジンができる反応

つまり、「ショ糖」と「タンパク質(アミノ酸)」を使った反応だと言えます。

どんな変化が起こるかと言えば、

  • 褐色になる
  • 香気成分ができる
  • 美味しくなる

最後は抽象的ですが、、、

でも、このメーラード反応というのは実は我々の身近な食べ物にもよくみられ、一般的にメイラード反応による食べ物は「いい香りがする」「美味しい」という人が多いので、あながち間違いでもありません。

例えば、パンを焼いた時、肉を焼いた時、いい香りがしますよね?他にも、醤油や味噌もメイラード反応を利用した食べ物です。

タマネギを飴色になるまでよく炒めますよね?そうすると甘さといい香りに変わりませんか?

そうなんです、このメイラード反応によって旨味のコクと香りを作っています。

人体でも起こっているメイラード反応は、低い温度帯でもゆっくり反応が進むのですが、熱エネルキーを加えることによって、反応速度が一気に増します。

反応する物質によって誤差はありますが、およそ155℃あたりで最も顕著に反応が進むと言われています。

これは焙煎中150〜160℃あたりで、色・香りが劇的に変化する事実とも重なります。

カラメル化反応

変化の様子は

  • 褐色になる
  • 香気成分ができる
  • 美味しくなる
  • 苦味成分を生み出す

最後の項目以外は、上のメイラード反応とほとんど変わりません。

ただし、メイラード反応と違って、「アミノ酸(タンパク質)」は使わず、「糖」だけが使われます。

カラメルソースやキャラメルなどがこれにあたります。甘苦いですよね?

カラメル化反応も糖の種類によるのですが、およそ160~200℃の範囲で起こり、

180℃ぐらいから香りが良くなり、反応が一気に進むそうです。

ただし、これは反応が進みすぎると糖の炭化、つまり焦げてしまい苦味が増してしまいます。

分解

コーヒー豆の焙煎において熱エネルギーによる分解反応は以下の2つに焦点を当てて見ましょう。

①クロロゲン酸の加水分解

クロロゲン酸が熱エネルギーによって、「キナ酸」と「カフェ酸」に加水分解されるという反応です。

温度にして165℃あたりから加水分解されます。

②ショ糖の熱分解

およそ100℃くらいから分解されていきます。糖は分解され、様々な有機酸を生成します。

これが、生豆には酸味は感じませんが、ミディアムローストまでに徐々に酸味が増していく理由だと考えます。

化学変化を操って焙煎しましょう

ここまで成分変化と、それに伴う化学変化を見てきました。

さて、焙煎をする際にこれらの化学変化の効果を知ることは非常に重要なので、整理します。

化学変化 対象成分 反応温度 効果
メイラード タンパク質+ショ糖 〜ピーク155℃〜 うまみのコクと香り
カラメル化 ショ糖 160℃〜ピーク180℃〜 甘苦いコクと香り 
分解1 クロロゲン酸 165℃〜 酸味とその香り
分解2 ショ糖 100℃〜 酸味とその香り

※分解によって生じる有機酸は、温度が高く(焙煎度合いが深く)なっていくにつれ無くなっていきます。

同じ豆を焙煎していても、全く違う味わいになります。

それは、これらの変化のパワーバランスの違いなのではないかと思っています。

酸味を強くするには、どの温度帯で変化を促すか、

コクを出すには、どの温度帯で変化を促すか、、、、

メイラードやカラメル化を起こしすぎたら、どの豆も単調な味に収束してしまいますし、

逆に起こさなすぎたら、いわゆる生焼けとか辛い・青臭い感じになってしまいがちです。

生豆が持つ個性と焙煎の良さをうまくバランスをとりながら、

そういった引き出しの組み合わせを、

熱エネルギーを操り、成分量と変化を巧みにコントロールすることがロースターとしての技量なのではないでしょうか。

何を持って美味しいコーヒーかの定義は難しいですが、

コーヒー豆を焙煎するときは、

どんなゴールを意図するか、そしてそれを再現できるかを踏まえてやっていきたいものですね。

今回のテーマはまだまだ議論の余地がありますが、今後も美味しいコーヒーを科学し続けていこうと思います。

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